アニェス・ベラドンヌ劇中で新聞記者【フィリップ・マンソニエ】を演じる坂本岳大が
共演者を取材する特別対談企画!






坂本 まず、今回の作品の最初の印象なんですが、どのように感じましたか?
小山 いやぁ、正直な話ね、他の作品だとみんなのシチュエーションがよくわかるから、どういう風に作ろうかなんて大体想像がつくんですけど、この作品は全然それがわからなかったねぇ。
坂本 えぇ?!わからないって… 
それはどういうことですか?
小山 というのはですね、起承転結があるようで、ないような作品なんですよ。ですから、ドラマの筋立てが、はっきりあるようでない。そこがわからなかった。
例えば、一つの言葉によって新たな事件が起こるといったような話しではないから、ひとりで読んでるときに、全部同じ調子で読んでしまって、そうしたら個性が全然見当たらなくなってしまって…

坂本 それは、ご自分の役も含めてですか?
小山 ええ、自分の役も含めて。もちろんアウトラインは大体わかるんですよ。でも、どうしたらみんなと絡み合っていけるかというのが、読んでいるうちにわからなくなってしまって。
これはもう、顔合わせのときに人それぞれの声を聞いて、それで立体感を感じるしかないと思って稽古に入りました。
坂本 なるほど。確かに活字でわからなかったものが、稽古場でわかることってありますよね。
それで実際に稽古に入って生の声を聞いてみたらいかがでしたか?
小山 それはもう、やっぱり個性が違うから、自分のポジションとか、自分はこういう個性がでるだろうなとか、だんだん感じることができましたよ。
坂本 今回はプロデューサーの役ということですが、ご自分の役に関してはどんな印象を最初に持ちましたか?
小山 いやぁ、申し訳ないんだけど、印象以前に、役者がいつでも陥る事なんだけど、台詞が入っているようで入っていなくて、それでも稽古を中断させてはまずいから、感情より先に台詞を渡さなくてはいけない。
でもそれじゃダメだダメだと思いながらやっていたから、自分の役の目鼻立ちが立たない状態で、苦しかったですね。
坂本 まさに「産みの苦しみ」ってやつですよね。
小山さんは、岡田先生の演出を受けるのは初めてということですが、今回参加してどうですか?
小山 岡田先生というのは自分のイマジネーションを沢山持っているから、自分のイメージというものを俳優に伝えてくれる。だから、ずっと聞いていると「あ、こういうことがやっていきたいんだ」っていうのがわかるんだけど、それを具体化する役者にとっては、時間のかかる作業ですね。
坂本 確かに「解る」と「出来る」は違いますもんねぇ。それはやっぱり小山さんにとっても大変な作業ですか?
小山 それはもちろん。たとえば、一瞬の息遣い、ひらめきで、言葉がぱんっと出てくるようになりたいと思うんだけど、そこは難しいですね。
岡田先生は、演出するときに我々俳優の真似をすることがあるじゃない?それを見てると、「ここは全然違う質の心情に持って行きたがっているんだな」というのがわかります。
坂本 岡田先生は自分でやっちゃいますからね(笑)
小山 前、ニコラ・バタイユさんと3本ぐらい芝居やってるんですけど、ニコラさんの場合、自分が俳優でもあるから、シチュエーションは完璧に決めちゃって、もっとやって見せてくれましたね。ただ、うまいですし、それで完璧にフランス人だから、「そこまでやられても、俺たち日本人だから…」というのがありましたけどね(笑)

坂本 今回楽屋の話じゃないですか。お芝居とは関係ないんですけど、今までで楽屋にまつわるエピソードとか、思い出とかあったら聞かせていただきたいのですが。
小山 僕ね、自分が台詞を忘れているのに、相手が次の台詞を言わないと思い込んだことがあって。そのシーンが終わって、「どうして台詞言えなかったの?」って相手に聞くと「小山さん、一言抜けたよ?」って言われて(笑)
坂本 ああ、舞台から戻ってきて、
楽屋で判明したわけですね(笑)
小山 そうそう(笑) その逆もありましたけどね。一つ自分の台詞を飛ばして、先の台詞を言った役者がいたわけ。その途端に、僕が受け答えできなくなっちゃって。仕方が無いから、元の正しい台詞を言ったわけですよ。別の共演者がそれをうまく受けてくれたのはいいけど、また台詞を間違えた役者のところに帰るわけですよ。そしたら、その役者、『さっきしゃべったよなぁ』と思ったらしく、言うの止めちゃったんですよ、途中で。でまぁ、次の台詞は何とか出て、先につながったんだけど、楽屋に戻ってから、そいつタバコ吸って、暢気な顔してるわけ。 「おい君、先のせりふを言っちゃったんだぞ?」って声かけたらそこで初めて気付いてました。
坂本 本番中は舞台の上でそういう話はできないですから、楽屋に戻ってから確認するってことは多いですよね。 では、楽屋っていう場所は小山さんにとってどんな場所ですか?
小山 そんなこと考えたことないけど…やっぱり、舞台に立つ準備をする場所かなぁ。
坂本 プライベートがあって、舞台があって、その中間に位置する場所ですか。
小山 はい。それぞれ共演者のその日の表情はどうかとか、相手からエネルギーもらいながら、自分で集中していくという。だから楽屋ではあまりしゃべらないほうですね。
坂本 色々な俳優さんがいらっしゃいますもんね。 わりと楽屋では静かにしているタイプなわけですね。
小山 どちらかといえばそうですね。人の言ったことで笑ったりはしてますけど、自分からしゃべることは少ないですね。
坂本 たしかに昴の公演でご一緒させていただいた時の小山さんは、楽屋で饒舌な印象はなかったです。稽古場ではそんなことないのに(笑)
では最後に、お客様に向けてメッセージをお願いします。
小山 稽古当初はかなり苦しんだんですけど、これおもしろくなるなっていう気はします。普通のお芝居ではなくて、楽屋のオチ話でもなくて、そこに生きている舞台俳優たちが居て、これから舞台俳優になろうとする者がいる。そして段々経験を積んでいく、といったものが明確に見えてくるから、初めて見る方には、「ああ、楽屋ってこういうエネルギッシュな所なんだ」っていうのが伝われば、面白くみていただけるんではないかと思っています。
坂本 なるほど。ありがとうございました。

一筆御礼

ご存知の方も多いと思いますが、私は昨年まで劇団昴に在籍していました。
ですから 小山さんは「大先輩」なんです。
やっぱり同じ劇団の先輩というのは特別なものでして、
それこそ新人の頃から「知られている」わけですから、
こちらとしては何とも逃げ道がないような感覚です。
とはいえ、その分心強いのも事実でして、
私が稽古場でのびのびしていられるのはこの方の存在があるからです。
プロデューサー役が乗り移って?!稽古場でもいろいろを見事に捌いてくれる小山さ ん。
さぞや「しっかり者」かと思いきや、けっこう「天然」の一面もあったりして、
なか なか一筋縄ではいきません。 そこが、まさに「ピエール・ポール・ブラン」?!
やり手のプロデューサーの頭の中にあるのは「数字」と「人情」と「???」。
それは劇場に来ての、お楽しみ!!

坂本岳大

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